まず脚を黒漆で塗っていきます。最初は木地にしみ込み艶引きしますが、塗り重ねるたびに艶が上がってきます。毎回研ぎ出しして面を整え、艶を合わせていきます。だいたい10回ほどこの作業を繰り返し、ほぼ満足できるレベルになりました。
螺鈿細工の復元には苦労しました。下地の木材が乾燥して面が出ていないことや部材の接合部に段差があることがその主な原因ですが、そもそも模様を描くのに使われていた貝がごく薄い事も一因です。面を出すのに専念すると貝を削りきってしまいますし、かといって削り足りないと形がシャープになりません。また、腰や足の形状が曲面のつながりでできているため面を出すのも容易ではありません。しかも漆そのものが経年劣化して浮いている箇所がそこかしこにあり、そのようなところは貝も下地から離れて浮いていました。これらには大変困らせれました。結局狭い範囲ごとにこつこつ手作業で漆で塗り固め、研ぎだしていくしかありませんでした。(3-5最終回につづく)