三面鏡の修理を依頼されました。
実物を拝見にうかがうと、
「長年しまわれていた古い三面鏡を直して使いたい、家の改築が完了した時までに直して納めてほしい」とのこと
たっぷり時間があるのでじっくり取り組むことができました。
破損した個所を修理していると、なぜここがこんな風に壊れたのかと考えさせられます。
今後同じような壊れ方がしないよう、今回はオリジナルには無かった工夫をしています。
まず最初に、修理完了の紹介と、新しく付け足した部分の使い方を動画でご紹介します
続いて修理前の状態と作業経過の紹介です。
■修理前の状態
マニュキュアのリムーバーで溶けてしまった天板の塗装や、制作時にはみ出た接着剤が褐色になって取れない汚れになっていました
鏡自体はクリーニングして使いますが、開閉がスムーズにできません
真ん中の鏡の軸受けが破損しています
天板の塗装が溶剤に侵されています
引出の中は後からグレーに塗られたようです
椅子の生地が裂け、パイピングが露出しています
椅子の底の角のところ生地の痛みがひどいです。下地の木部も割れてしまっています
椅子の回転にもガタがあります
■修理の経過
まず分解です
鏡の枠を調べます
破損した軸を調べ、修理の方針を決めます
金具の付け根の木部が割れていました。割れを接着して補修し、金具をつけ直すことにしました
蝶番が歪んでいます。この歪みをとらないとスムーズな開閉ができません
蝶番の歪みは、カナ床の上でたたいて直します
歪みのとれた蝶番です、ビス穴に木片を入れて接着し、再度蝶番をしっかり固定なおします
軸受け金具の下地となる木部の補修が終わりました
天板の角はR状に貼られた化粧板が剥がれています。
R部分を削り落とし、無垢の木を接合しました。
椅子を分解します。木部の補修をすませ、剥がした生地を並べて大きさを測り、型紙を作ります
ご希望の色のビニールレザーで椅子張り生地を作ります。ミシン仕事です
オリジナルの心材を使いパイピング仕様で再生しました。裏返すとこんな感じです
椅子の軸受けのガタをなくします。ガタは0.2ミリの真鍮板を軸受けの隙間に入れることで解消しました
軸受け部品の塗装です
椅子貼りです。クッション材にオリジナルの藁と新たにスポンジを付け加えました
椅子の組み立てです
脚のベースは新たにナイロン製のものに交換しました
椅子の完成です
本体の塗装です。油性のウレタン塗装にしました
脚の裏には硬質のフェルトを貼りました
本体の組み立て完了です
修復中に考えていた改善策、人工大理石の天板と、鏡の開閉ストッパーを書いてみます
付け足したパーツ鏡の開閉ストッパーです。
フルオープン、多機能です。完成しました。
最後に今回の修理費は全て込みで約5万円です。ご参考まで。