家具には特殊なネジを使うことが多いです。このスツールは生地貼りをした後で脚に接合する作りなので、ネジの頭が低くないとお尻に当たってしまいます。作られた当時、頭の低いネジはこのユニファイ規格のモノしかなかったのでしょう。数10年使われている間にどなたかが直された痕跡もありましたが、この規格のネジは今でも入手が困難です。修理の時に交換されたと思われる、サイズの違うナットも使われていました。どうやって入手されたのでしょう、当時相当苦労されたと思います。今ではネットで検索して探し出し注文することができますし、ネジそのものの種類が大変豊富になっています。
座面左右に脚の湾曲した部分があり、持ち運ぶとき掴むのに便利です。軽くて小ぶりで使い勝手のいい椅子です。ご依頼者様はこのスツールを、最近新しいビルに引っ越しされたある団体から譲り受けられたそうです。危うく粗大ごみになってしまうところを救われた椅子なのです。仕事柄いろんな椅子に巡り合いますが、これは隠れた名作だと思います。良いものには良い運命が開ける。構造が理にかなっているので軽くて丈夫、スタッキングできて省スペース、小ぶりで可愛らしい形。貼り替えられた椅子は来客用として活かされるそうです。