「お盆」とか「ヘギ」という名前を聞くと、とたんに伝統工芸の感じがしてくるのが不思議です。和ダンスの部位の呼称ですが、子供の頃に時々母親が和服を着る姿を見てきたせいか、この呼び名の背後に当時の生活が感じられられ、何だかありがたい感じがします。「なんとか直してほしい」と話されるご依頼者様の和ダンスへの思い入れを、ほんの少しですが私も共有できるのです。
ひどく白アリにやられた「お盆」と破損した「扉」を修理しました。オリジナルと同じ「桐材」と、木目の通ったよく乾燥した木材を用意して作業開始です。
扉の修理です。強い力がかかって右の扉の角が割れ、欠損しています。
この後、扉を本体に組み付けて修理作業は終了しました。
実は「お盆」と「扉」以外にも本体の細かな修理をしているのですが、過去にご紹介した事例と同じ作業なので割愛します。
文字で書いて伝えるために、各部の名前を調べました。「かつて職人の世界は分業制だったので、呼称の統一は仕事をバトンタッチしていくうえで大切な事だったのだ」とその過程で改めて気づきました。これらの趣のある名前には文化を育んできた職人の気概が込められていると感じます。かつて先輩職人から見習い小僧さんへと受け継がれてきた由緒ある呼称です。思いがけない所で文化の香りに触れました。