ブックケースのリメイクと修理のご依頼をいただきました。
高さを40mm程切り詰め、ペットの齧り跡を修理し、欠損した真鍮製の鍵を直したい。との内容でした。
真鍮の鍵は、鍵本体ごと交換することにして、パーツ手配に入ったのですが、日本では真鍮製の鍵パーツはもう作られていなく、海外から販売代理店を通して輸入することになりました。当然時間もかかり、製造元の提示した納期まで待つしかありません。急遽ご依頼主に了解いただき2カ月ほどこの作業はストップしました。
このガラス扉の細かなガラス枠は骨組みが全て木製で、特殊な形のガラスは全てクジラの油で固定してありました。現在ならシリコンを打つところなのですが、特に傷んだところはなく、とても良い状態でしたので、それはクリーニングするだけにして、主に木枠の経年で褪せた色と艶を復元しました。
このブックケースは、いわゆるアンティークにあたる家具だと思います。特にガラスがクジラの油で固定されているなど、今ではあまり見かけないディテールがそこかしこにありました。それだけに貴重なモノだと思います。
提案した「鍵パーツが入手されるまで待つ」との施主のご判断で、この貴重なブックケースに本来の機能と輝きを復活させることができました。この鍵パーツは間違いなく手作りです、一つ一つ人の手でモノを作る。日本にもこのような本来のモノつくりに必要な時間を割くことのできる時代があった。かつて可能だったことを再び取り戻すには、やはりこのところの経済効率のみの追求を反省し、そのことによって失われたことに目を向け、改めてそこに失われた価値を見出す必要がある。と痛感しました。それはたぶん純粋に作ることへの喜びなのではないかと思います。
- Tags
- アンティーク家具の修理, 真鍮製の鍵, 真鍮製の鍵の修理