先々代から引き継いだ大切な家具を直してほしいとの依頼がありました。少なくとも大正末期頃のモノのはずだ、とのことです。1924年は大正13年ですので、ここではきりよく100年前のちゃぶ台としました。

脚の開閉ができるように直すために、まず天板を外します。この埋め木してあるところの内部でビス固定がしてあるはずです。
ドリルで慎重に木栓だけを取り除きます。
予想した通り中にビスの頭が見えます。しかもこれはマイナスのネジです。
ビスの頭を舐めないよう慎重に抜きました。錆びて脆くなったネジは場合によると頭が欠けてしまうこともあります。穴の底でそんなことになったら、そのリカバーに大変な労力を費やすことになります。
八ケ所のネジ全てを外し、無事天板が外せました。
脚の開閉機構がどのようになっているか、何が原因で不具合が引き起こされたのか、よく観察し考え、修理の方針を立てます。
後の作業に備え、接着剤の残滓を取り除き接着面を木地をあらわしてしておきます。接着面に異物が挟まった状態では完全な面接合はできません。
ですがこの接合部には二本のネジて固定してあります。しかもここのネジは完全に錆びていて周辺の木と一体化しています。ここは錆びた頭を切り落とすことで対処します。
取り外した脚の状態をよく観察し、あとで組み立てる時に困らないよう接合部に合番を振っておきます。
脚の開閉が渋い原因は、回転軸になっている丸い棒が摩耗によって鼓のように変形していたためでした。堅木から同じ太さの丸棒を削り出します。
ストッパーの摩耗ですり減ったところに堅木の薄板を貼りつけます。およその整形を済ませ、組みあがってから最終調整をします。
組み立てです、枠から組み始め、回転軸を新調した脚をはめ込み、ストッパーを組み込みます。
天板と再接合します。クランプで圧着した状態で一晩置きます。
組みあがった状態で表を確認します。
脚の開閉機構を調整します。
ビス穴に木栓を埋め直して余長を切り落とし色合わせします。ストッパーと擦れてすり減ったところに貼った薄板を、動きの確認をしながら少しづつ削って調整しています。
新しく加わった木部の着色も済ませ、脚の開閉機構が復元しました。
天板を塗装仕上します、消せ切れない深い傷や変色は極力目立たないように調整して仕上げました。
このちゃぶ台の上で書き物もしたいとのご要望だったので、厚みのある塗装で木目の凹凸を埋め込み、極力天板が平滑になるよう仕上げています。

古いものは直すのは大変ですが、これまで使われてきた時間と同じだけ、また使い続けられることを可能にする仕事なので、とてもやりがいがあります。