箱の箱です。大正7年(西暦1918年)に作られたことが箱書きで読み取れます、ですから単なる箱ではありません。何と100年前に作られた由緒ある箱なのです。

100年前の箱の箱、修理完了

大正7年、西暦1918年に作られた箱

作業開始前

底板の枠が一本欠損しています

天板には大きな割れが入っています

側面の板が外れています

修理の開始です。まず紐をクリーニングして詳しく調べます

特に目立った痛みもないので木片に綺麗にまいておきます

板のクリーニングです。水にぬれると木の色が美しいです

天板の割れは5mmありました。100年で300mmあった幅が5mm縮んだのです

隙間の形に合わせて同じ樹種の木片からを切り出します

小口は斜めになってますから小刀で角度を合わせて削り出していきます

色合わせしました。100年の時の流れが杉の色の違いになって現れています

隙間を埋める木片を挟んで天板を接着します。逃げないよう板で挟んで万力で締め上げます

次に欠損している部材の制作に入ります。まず色の近い材を選びます、水に濡らして色を確認します

材の切り出しです

外形を合わせます

接着です

紐のを通す穴を開けて、色合わせしていきます

色合わせの完了です

竹釘を作ります。そして部材を接合していきます

組み立て完了です。この後竹釘の頭の処理と色合わせして完成しました。

上下はこんな感じに分離します。重箱を下の枠に入れ、上の部分をかぶせて紐で結んで、納戸にしまう、御年100歳の箱なのです。

以前展示施設の展示物の複製を作っていた経験があります。今回の箱の箱ではその経験が活きました。複製品は基本的に触られるものではなく見られるだけのものなので、むしろ実用品を修復する方が耐久性などが問われ、使える材料に制約があって難しいかもしれません。

この修理、ご依頼者様からお預かりして半年くらいたってしまいました。実はその間、オリジナルと同じ杉材を手に入れ、太陽光に晒して同じ色になるのを待っていたのです、ですが何カ月たってもやっぱりだめで、結局いつも家具の修復でやっている方法で色合わせすることになりました。納期はいつでもいいとは言われていたのですがさすがにこんなに時間を使ってしまうと恐縮してしまいます。この100年経った箱が、たぶんこれまでで一番長い時間手元にあったことになりました。