リビング側に突出している造作カウンター。対面キッチンから料理を運ぶときには広くて便利だけど…

造り付けカウンターの改造をできないかご相談がありました。普段あまりやらない出張作業ですがお近くなのでお引き受けしました。下見に行ってみると、なるほどとうなずけるご要望でした。お子さんの頭の高さに角があります、このままでは危険です。

角が小さなお子さんの頭の高さになるため危険。クッションを貼って凌いでこられた。

クッションを貼って凌いでこられたようですが、食卓画に座ると、大人の顔の高さになっていて圧迫感もあり、よくありません。ご要望通りカットすることにしました。

このカウンター下の収納庫の扉、開くと出入口を塞いでしまう。

ついでにもう1か所改造したいところがあるとのことで拝見したのが、このカウンターのカットする先の方にある、収納スペースの扉です。見た目はスタイリッシュですっきりしていていいのですが・・・

缶ビールを入れているので、使い勝手の悪さが、毎日気になってストレスになっているとのこと。

どう考えても扉の開く方向が反対。これだとモノを取り出す時、出入り口をふさいでしまう。反対側が開けばテーブルから半開きにしてモノが出せるのに、このままだと一旦扉の先まで行って完全に開いてモノを取り出し、また完全に閉じなければ元いたたところに戻れない。これは直さないと。

一通りご要望と状況を確認し、下見終了。費用がどのくらいかかるかご連絡して、ご了解いただき、部品調達と仕込みから作業を開始しました。

まずは丁番の手配、必要な機能を満たす丁番の選定から仕事が始まります。
専門家用のカタログは分厚く、膨大な種類の中から選び出すのは一苦労。
出張作業なので仕込みが大事。カットしたカウンターの小口を塞ぐ化粧板を切り出します。
持ち合わせのメラミン化粧板が、下見の時色合わせしてみると使えることが分かりました。
専用のカッターで切り出します。紙と違い何回も刃を通して溝を切り、割るという感じ。
アイカのメラミン化粧板、この品番で色が厳密に合わせられます。
現地での出張作業。まず作業エリアの床を養生。電動工具でカットするので広めに毛布を敷きます。
カットする位置を正確に卦がきます。
カットすると断面はこんな感じ。小口の処理をしないととても仕えたものではありません。
専用の接着剤で用意してきた化粧板を小口に貼って仕上げます。
化粧板のカット面をサンドペーパーで処理し、面取りして仕上げました。すっきりいい感じです。
次に扉の開き勝手を変える作業に入ります。
各所の寸法を厳密に採寸して記録。木造作とはいえ0.5mm程度の精度がないとこの手の丁番は機能しません。
丁番の取り付けブラケット。数種類の本体に適合する汎用型。
本体への接合方法もしっかり確認。
取り外した丁番の跡を埋め木します
今回使ったのは桜材です
丸く削り出し、埋め込みます
完成した扉、
ここまでは工房での作業。丁番を移し替えた扉を持って、再度現地に取り付けに行きます。
現場での取り付け作業
ブラケットを先にねじ止めしておいて
本体と合体、微調節して仕上げます
完成。なんだか最初からこうなっていたような佇まいです。先日カットしたカウンターも、もう既にこちらの生活になじんでいるようです。

家具は使い始めてみないと見えてこないことがたくさんあります。キッチンやダニイングまわりは、それこそ使わない日は無いわけで、少しでも不便なことになっていると結局大きなストレスになってしまいます。この事例のように軽微な改造で解決する事もあります。同じような悩みを抱えていらっしゃる方一度ご相談下さい。私も今回の件で気が付いたのですが、家具の補修技術は思っていたよりいろいろなことに応用が可能です。解決策をご提案できると思います。