レストアしたスーパー楕円テーブルです。天板をメラミン化粧板に貼り換えてあります。

フリッツ・ハンセンのスーパー楕円テーブルをもう何回も手掛けています。その度に思うのですが、しっかりしたいいものを長く使い続けること。これは大げさかもしれないけど、地球を救うことにつながるのではないでしょうか。最近よく耳にするSDGs、これをもっと身近なところに引き寄せたいのです。それには、忘れかけていた価値観をもう一度思い出せばいいのかなと思います。

事例紹介をご覧になった方からご依頼を受け、スーパー楕円テーブルをレストアしました。だいぶ傷んだ個体でしたがこのデザイン、構造と素材がしっかりしているから大丈夫です。新品に蘇りました。

今回はシリーズ中最も小さなタイプで天板の縦横寸法が同じです。実物を拝見したところ天板の突板の痛みが深く、天板にメラミン化粧板を貼りつけてレストアすることになりました。
工房に持ち帰りまず裏側のクリーニングからレストア作業を開始します
たぶん引っ越しの時に手荒な扱いを受けたのでしょう、裏面にはゴムが焼き付いたようなひどい汚れがついています。これは通常のクリーニングでは落とせません。
350番からはじめ600番のサンドペーパーで汚れを削り落としました。
次に脚のクリーニングです。手掛けるたびに感心するのですが、合理的なデザインの脚です。天板への固定方法もミニマムで美しく、無垢の鋼材が使われていて、しっかりしていて重く、天板に取り付けると「しなり」、美しい曲線を描きます。仕上げのメッキも厚く強いので安心して磨くことができます。弾力が強いので「指をはさむ」ことには「注意」ですが。
次に足のクリーニングです。下の写真が作業前、上が作業後です。写真では写りづらいですが、小さな錆の粒が至る所にありました。汚れと錆をワイヤーブラシと000版のスチールウールで擦って落とします。この後でピカールで磨いて錆取りと艶出しが完了です。
完了した脚と取り付け金具です。作業用に木製の楔を作りました。この楔は、脚に傷をつけることなく確実に脚を開く事ができるので重宝します。以前指を挟んでチマメを作ったことがあるのでこんな道具を考案しました。
いよいよ天板の下地調整です。オービタルサンダーに120番のサンドペーパーを装着し、天板を平らにならしていきます。削ってみて初めて分かったのですが、この突板は今では貴重な幅の広いチーク材のようです。
少し赤みがかったチークの美しい柾目です。
残念なことにテーブルの端が浮き上がっています。平面に仕上げることを断念すればチーク材を活かしたレストアの可能性もありました。ただし、反ったなりに天板の端を仕上げるのは手作業で、大変難しい作業になったはずです。
作業テーブルの上の二本の棒は、化粧板を正確に位置に接着するのに必要な道具です。この程度の大きさでも水平にするとたわみますし、一旦ついてしまうと剥がせなくなるので、位置合わせはやり直すことができない作業です。いつもとても緊張した作業になります。
化粧板の裏に一回り大きくカットラインを引きます。
化粧板のプレカットにはこんなハサミを使っています。このハサミは切った材料に逃げ場があるので使いやすいです。
接着の準備が整いました。この後貼りあわせる面両面に接着剤を付け、指がつかない程度に乾かしてから貼りあわせます。もちろん写真を撮る余裕などありません。
無事貼り終わりエッジの処理に入っています。緊張する作業は逆にリズム乗って一気にやってしまう方が良い結果になることが多いのです。
私ははみ出た化粧板の処理に電子制御式ルーターを使っています。この刃はベアリングの治具が付いた優れものです
その後でサンディングブロックで小口を仕上げます。ここは全くの手作業、アナログです。
化粧板の養生シートを縁の部分だけめくります。
小口の塗装仕上の下準備です。養生テープで天板の縁を保護します。
裏返して斜めに削られた面をサンドペーパーで下地処理します。
今回テーブルの小口仕上にはラッカー系のサンデイングシーラーを使いました。これは微細な隙間に入って硬化してくれるので、乾燥後表面を研ぎだして平滑に仕上げるのに便利な塗料です。
3回ほど塗りと研ぎ出しを繰り返しました。
化粧板の断面も綺麗に面一に仕上がっています。
納品先での写真です、プラスチック製のカバーベースを脚の先端に貼り、天板裏に脚を固定します。ここでも木製楔が活躍してくれました。
化粧板の養生シートを全て剥がし完成です。