茶箪笥の修理をしました。江戸末期から明治時代に作られたモノのようです、中にある引き戸がカーブした凝った作りで比較的状態も良く、表に面した縁に数か所不具合が見られる程度です。

まず工房で分解し並べます(このところデジカメの具合が悪く見づらい写真ですみません)
この茶箪笥は上下2段に重ねて使う作りです。まず下の段から作業を始めます
下の段を横にしました。目立つ大きな不具合が2か所あります
縁に欠けと
表面の化粧部材にはがれたところがあります。
この2か所を一緒に直していきます。まず補修に使う木の選定です。木目と木肌がなるべくあっている木片を選び出します。
次に接合箇所のクリーニングと整形です。
化粧縁回しの欠損は該当個所を一つなぎで交換する方針とし、接合面を整形しました。
かけた個所のアップです
まずこのように整形しておきます。
ついで接合する部材の加工に入ります
大まかに整形し
接着します。借り釘とテープで圧着し、
養生しておきます。
別の各出から見るとこんな感じです。後で削り落とす前提でかなり大きな部材を接着しました。
続いて、引き戸の補修に入ります。驚いたことに角の補強に裏からあてられたものは和紙でした。
最も大切な角に亀裂が入っていました。一旦この補強の和紙を剥がします。
綺麗にそぎ落とし
同じ仕様だった他の角も同様に補修します。
和紙を入手しました、必要な形を罫書ます。
切り出した新しい和紙。4枚重ねて貼り付けます
貼り終わったところです。ノリにはオリジナル同様ご飯を練り上げたものを使いました。
このようにして貼り重ねた和紙はとても頑丈です
鉄砲隊の今で言うヘルメットが貼り重ねた和紙を漆で塗り固めた作りになっていると、以前何かの本で読みましたが、家具に使われているのは初めて見ました。
この引き戸ガラスが入ります、薄くて強い和紙での補修、材料からして純和風です。
次に上段のクリーニングです。右側に凝った作りのR状引き戸、左側に雲形の棚。当時の職人が技術の粋を投入した作りです
引き出し類も同様にクリーニングして艶合わせの再塗装をして仕上げました。
さて接着して養生していた個所の整形に移ります
養生釘を抜くとしっかり固定されています
テープで養生した側もしっかり乾いています
隣接する塗装面を傷めないように養生し
鉋とサンディングペーパーで形を整えます
かまぼこ型に整形し
周囲の形に倣い、整形終了です。後は色合わせし、艶を合わせて塗装で仕上げれば完了です。
色合わせ作業の終わったところ。この段階では少し薄いくらいの着色で止めておきます
組み立てて周囲と色・艶を最終合わせして仕上げます。もうどこが壊れていたか見分けがつきません。
同様に開き扉
引き出しも再塗装して仕上げていきます
組み上げるとこんな感じです
外しておいた引き出しの取っ手も組付けます
組みあがった下の段です
裏板の経年による収縮でできた隙間に埋め木をします
最後に引き出しなどの開閉の調整をすれば完成です
工房で組みあがった状態
作業場所の自然光の下では、木目がはっきりしていて美しい仕上がりが見れます
現地に搬入し、組み上げて
完成です。