食卓の天板の割れを詳しく観察してみると、割れは全て木材の接合部分に起きていました。その原因は、接着剤として使われている膠が湿気によって溶解したのと同時に、環境湿度の極端な変化により、接合された部材ごとに異なる方向へ反ったのためだと思われます。たぶん、長期間屋外で雨風に当たるか、シート覆われていたとしても、内部に入り込んだ湿気や水気に晒されていたのかもしれません。
食卓の修理開始です、まず全体にクリーニングします。
養生している間に椅子の方にかかります。
椅子の座面にも割れが生じていました。製造時の接着面のはがれが原因の割れで、食卓天板と同じ原因だと思われます。作業自体は再接合なので、位置さえしっかり合わせれば接合面の成型などの作業が不要ですが、本来割れるはずのない所が割れているのですから、しっかり接合しないと椅子として機能しません。ひたすらがっちり再固定していきます。
食卓の修理作業に戻ります。
松本民芸家具は柳宗悦の民芸運動が発祥の家具メーカーです。信州産の無垢の木材をふんだんに使った、重厚なデザインが特長です。今回手がけさせていただいたC型食卓や椅子は、日本人の体格に合ったサイズ感で、特に座面や天板の高さについては、室内では靴を履かないライフスタイルを意識して設定されていて、かつ全体のバランスも美しく保ったまま、西欧の家具デザインを日本文化に適合し、昇華させていると言ってもいいかもしれません。実際に修理を手がけさせていただいてなるほどと納得させられることばかりでした。その良さに魅了されている方々に少しでも長くお使いいただけるよう、これからもお手伝いさせていただきたいと願っています。