「アメリカの大統領が使っていたのと同じモノなので、修理して使い続けたい」と、脚の外れたセンターテーブルの修理を依頼されました。
調べてみると、「これと同じデザイン、大きさのセンターテーブルがクリントン大統領の執務室に置かれていた。」という写真入りの記述に出会いました。残念なことにメーカー名までは紹介されていなかったので、確かなことは、見た目の形と大きさが全く同じだということしか分かりません。ですが、改めて見直すとこのセンターテーブル、優雅に広がった脚のデザインのために、かなりの投資がされている贅沢な作りです。足やその支柱は高級材のマホガニー製ですし、チーク材で縁取られた天板もマホガニーです。
ではなぜ脚がもげるようなことになってしまったのか、その原因の排除も含めた修理を目標に作業を開始しました。
脚の真ん中の支柱に全ての外力が集中してしまう、この脚のデザインそのものに弱点があると考えられるので、補強材を追加してこの原因に対処する方針で作業を進めることにしました。
このような円盤を追加設置することで、4つに分かれていた金具を一体化して脚の付け根に集中している応力に対抗する措置を施したのです。
このテーブルを始めてみた時に、この脚の構造は力学的にかなり不利だと直感しました。実際に壊れた脚を観察した際にこの感を強め、結果として金具を互いに締結させるという改良をするに至りました。
たぶんここまでしても、ソファーなどから立ち上がる際にこのテーブルに手をついて体重をかけるような使い方をしたら、同じように脚が外れるかも知れません。
このセンターテーブルの脚先には贅沢な無垢の真鍮製の飾りと、小ぶりな車輪がついています。この車輪の設置面積はとても小さく、カーペットの上では沈んでしまって用をなさず、フローリングの床では床を傷だらけにしてしまいます。ですのでこのテーブルは、大理石のような石材でできた硬い床の上に設置される前提で作られたモノだと思われます。そのような床の上で、車輪のついたテーブルに体重を預けたら、テーブルが逃げてしまって、とても危ないわけで、そもそも、そのような使い方はされない前提で作られたものなのだと思われます。
ですが、今回追加した金具での締結がしてあれば、仮に脚が折れたとしても、金属の補強部材が剪断されるこようなことは起こりえないので、瞬時にポッキリいくことはありません。ですので、万が一また脚が外れたとしても、怪我につながる恐れを減らす、フェールセイフな処置だと考えています。