20年以上使われてきたダイニングセットの修理をご依頼されました。

天板中央に焼け焦げの跡があります。
手に入れてすぐ焦げ付かせてしまい、長年そのまま使ってこられたそうです。

木部にまでダメージがあるので、完全には取り切れないことをご了解いただき「なるべく目立たなく仕上げる」方針で作業を始めました。

外した脚、20年以上使われてきて、相応の汚れと小傷はあります。細かな補修をします。
椅子4脚、角の塗装が剥がれていたり、
背もたれの籐編みが切れています。籐編みシートの手配をして、作業を開始しました。

天板の焦げ跡の処置はどんな方法が適切か、実際に作業にかからないとわかりません。まずはこの気がかりな天板の熱ダメージがどの程度か調べることから始めました。

天板中央の焦げ跡を、どんな深さまでダメージを受けているか調べるため真っ先に削ってみます。

やはり、ダメージは木部にまで達しています。あまり深くまで削ってしまうと天板に凹みが出来てしまいます。塗装の過程で色合わせを繰り返し行い、極力目立たなくする方針で作業を進めます。

天板全体の塗装を削り落とします
削り終わりました。

一旦、椅子の方の作業に移ります。

椅子のフレームには1か所折れた桟を直したところがあります。養生テープを剥がしてみると綺麗に繋がっていたので強度的な不安を払拭することを念頭に作業を進めました。
まず、背もたれの籐編みを外します。
シートは外れましたが、まだ溝底に打たれたステープルが残っています、これをきれいに取り除かないと新しい籐編みを組み付けることが出来ません。ここからは根気のいる地味な作業がしばらく続きます。
幅2mmの特殊硬製ニードルです。これで溝底のステープルを2つに切断し、
独自に改造したワイヤーカッター、切断したステープルの端を掴んで引き抜きます。
刃を削り落とし、ステープルの端をつまめるよう1mmほど平らにしてあります。
運よくステープルが浮いている箇所はこれを使います。自分で改造した細いラジオペンチで引き抜きます。
先端の形状、ステープルの横向きになったところを先端のくぼみに挟み込み、同じく自作の木製梃で引き抜きます。
全てのステープルが取り除けました。

次に、接合部の緩みの引き締めや強度的な補修をします。

今回は特殊な補強作業のため、4mm径の長ドリルと、5mm径のステンレス棒を用意しました。
補強したい個所の部材を全て貫通させた4mmの下穴を空け、
接着剤を押し込み、5mmの丸棒を叩き込みます。脚を貫通して、修理でつながれた個所を横断し、その先まで強固につないでしまいます。

次にグラつくひじ掛けの引き締めを行います。

肘掛を一旦外します。
木栓で埋め込まれた木ビスを外し
肘掛パーツを一旦外しました。
肘掛の固定に使われていた木ビスです。前後で微妙に長さの違うビスが使い分けられています。
接着剤を入れて木ビスで再固定します、これは後ろの側の再固定、
これは前側です。この後はみ出た接着剤をきれいに拭き取り、木栓をしてから塗装して仕上げます。
塗装して仕上がったひじ掛け、
手で擦れて塗装の剥げた、曲線部分をタッチアップして色合わせし、透明の仕上げスプレーで塗装しています。
天板の塗装終了です。全体に木目の美しさが強調された仕上がりになりました。問題だった焦げ跡は、無くすことはできませんでしたが、木目の濃い部分と同じ色に仕上げることで、多少は改善しました。
次に脚の細かな傷をタッチアップし、
吹き付け塗装で仕上げました。
手配していた籐編みシートが届きました。
これは、四ツ目編みと言われるタイプでオリジナルと同じものを入手しました。
一回り大きなサイズに切り出し、ぬるま湯に一晩漬けておきます。
改めて溝をきれいにクリーニングして、内側の角を入念削ってに丸めます。
溝底にステープルで止め、接着剤を入れて芯材を押し込みます。
その接写です。この芯材を打ち込むことでテンションがかかります。
芯材を打ち込み終わったところ。
手製の木製道具で打ち込みます。
乾いてピンと張ったら、次に色合わせをします。
調色して色合わせした染料系の塗料を使います。
椅子が1脚完成しました。
背もたれ上部の塗装など、細かな部分の補修も終わり、クリヤー塗料を吹き付けて仕上げています。
完成した4脚です。