ダンボールの空き箱は、スーパーで食材をまとめ買いするたびにもらってくるので結構貯まってしまいます。普段は資源ごみの日に出しているのですが、今回そのうちの一つが型紙になりました。
トップチューブとダウンチューブに接する辺は凹んでいて、シートチューブ側の一辺のみ凸型の断面。ヘッドチューブ側に引っ張ってはめ込む。デザインコンセプトそのままの楔型バックです。
この状態で付近を走って試しましたがバックは微動だにしません。ネオのダウンチューブには大容量のバッテリーが内蔵されているので、結構な太さがあります。その寸法がそのままバックのマチ幅になるので、結構な容量も確保できそうです。確かな手ごたえを感じたので、さらに型紙での検討を進めます。
この2つ目の型紙には米袋をだった丈夫な紙を使いました。ゴミになるはずだったものが型紙になる、これはこれでプチSDGsです。材料費もかかりませんし、廃棄物処理の負荷もほんのちょっとだけ抑えられます。
作ってみて良い感触なので、さらに最初の型紙と融合させてバックのかたちに整えました。これを丁寧に外せばそのままレザークラフトの型紙になります。
試走中に気が付いたのですが、自転車を漕いでいる状態で、このバックの中のモノを取り出せたらとても便利です。これは是非とも右側に大きな開口部が欲しいなと思いました。そして、この開口部の蓋をどうするか、再びスケッチに戻り腰を据えて考えます。
以前オリジナルフレーム入りのがま口型バックを作ったことがあります。その時の経験を活かしてこの蓋のデザインを進めました。
一方課題だった、A5サイズのノートの収納についても再度検討します。
やはり三角形の中に四角形を収めるのは難題です、そもそもこの三角形のスペースが狭いのです。どうも思うように配置できません。それで再び原寸の型紙に戻って検討することにしました。
ですが、最大限に大きく開けた開口部からA5ノートを入れようとしても、バックのシートチューブ側に当たってしまい、入りません。三角形のこのバックの、シートチューブ側の一辺をずらせればいいのですが、それができないのです。
実はシートチューブ側の寸法のゆとりは、このバックを自転車に取り付けるときに不可欠です。なぜなら、このバックの取り付けは、まずフレーム中央の三角形のスペースに横から入れて、その後で前方にスライドさせることで固定する仕組みだからです。ここに寸法的ゆとりがないとバックが脱着できなくなってしまいます。
これはもうダメかなとあきらめかけた時。また閃きました。レザークラフトの手法にウェットフォーミングがあることを思い出したのです。それを活用できればシートチューブ側の一辺は、なにも直線でなくとも良くなるのです。
ウェットフォーミングは、素材をベジタブルタンニン鞣しの革に限定しますが、「水で濡らした革を型にはめ込み、乾かすことでその形を保たせる」という手法です。以前ナイフのシースづくりで試してみたことがあります。不思議なことに、この方法で整形した革は、指で弾くとコンコンと鳴るほど固く引き締まるのです。
早速この方法を採用することにし、この辺だけ三次曲面にする前提でスケッチしてみました。
このスケッチを描いて、やっと制作方針が決った手ごたえがありました。このバック、持てるレザークラフト技術を総動員するなかなかの難物です。ウェットフォーミング用に複雑な形状の木型も作らねばならず、日頃の木工技術も発揮しなければなりません。
細かな事ですが、紙細工で言う「のりしろ」にあたる部分がレザークラフトにもあります。これは、どのような手順でどのように作るのか決めることで自ずと決まって来るものなのですが、あらかじめこれをしっかり煮詰めて型紙に反映させておかないと、スムーズなレザークラフトは不可能です。
これでやっと具体的な制作に入る準備が整いました。蓋の留め方にまだ検討が必要ですが、これはもう作りながら決めてもよさそうです。先が見えてきたので、必要な大きさの革の手配に入ります、一方で型紙をネオから外し、革裁断用にアレンジし、いよいよレザークラフト開始です。
これで、紙くずを貼り付けた変な自転車の輩から卒業できました。次稿からいよいよ具体的なクラフトワークをご紹介していきます。