厚さ7センチほどの屋久杉天板の重厚なテーブルの加工を依頼されました。引っ越し先の新居に収めるため少し小さく切り詰めることと、お子さんが生まれるので、鋭利な角を全てなくしたいとのご要望でした。

分解し、工房に運び込んだ屋久杉の天板です。

お引き取りしてみて痛感したことは、この天板が男性一人分くらいの重さがあるということです。納品に、引っ越し先のタワーマンションに運び込む算段もよく考えておかないとなりません。幸い引っ越しまでに時間はたっぷりあります。

分解した脚です。楔で固定するタイプなので、分解組み立ては容易ですが、一つ一つのパーツが重量物です。
楔と脚のホゾ穴周辺を子細に観察します。小さなお子さんには危険な角がたくさんあります。
まずはクリーニングから作業開始です。この状態の、表面が風雨にさらされた白っぽい仕上がりを希望されていました。
クリーニングで水に当たると濡れ色になります。通常の仕上方ではこのような濡れ色方向に仕上がりの色が寄っていきます。
もう片方の脚です。
同じくクリーニングして濡れ色にし、乾く過程の色の変化を観察して、仕上げ方法を検討します。
単なる汚れと、残したい白化色を見極めます、でも、とにかく汚れは落とさなくてはなりませんし、
表面にささくれがあってはなりません。
矛盾したご要望に頭を悩ませつつ
作業を続けます。
クリーニング完了。乾かした色味です。
脚を組み立てる楔も大型で重厚です。
とりあえず脚まわりのクリーニングが終わりました。
天板もざっとクリーニングして、カットする位置を罫書きます。
よく見ると部分的に白い塗装がされているようです。これが仕上方のヒントになりました。
次に脚の肌理を整えます。木目方向にサンデイングペーパーを当て、滑らかな平滑面にします。当然白化した表面は削り落ちてしまいますが、この段階はそれでよしとします。
組み立てた時に突出する所を中心に角を丸めます。
特にこのような鋭利な先端は入念に丸めます。
ホゾの周辺も大きめのRに削り出しました。
子供の小さな指が入りそうな凹んだところも手を抜けません。ワイヤーブラシで鋭利な角は削り落としてしまいます。
角を丸める加工前、
加工後です。当然色味が変わってしまいますが、優先すべきは子供の安全です。
いよいよ天板の切り詰めに入ります。
手持ちの電気ノコギリで下まで刃が届かないかったので、最終的には手鋸で切断、完了です。
切り詰めたとはいえ長さ170センチの天板は重厚です。
切断した小口を平滑に処理します。
木目が見えてきました。
普通は「契り」蝶ネクタイ型ですが、楽しい形が与えられています。一種の象嵌の絵のようです。これをしっかり残すこともご要望の一つです。
天板の平滑面を削り出し、微妙に白く色付けして仕上げに向かいます。
子供の頭の高さになる角は入念に丸め、小口の色とも違和感なく仕上げます。
犬の象嵌です。
風船と子供です。
仕上がりの色味と平滑性のバランスは事前にご指定された色とほぼ同じに仕上がりました。
最終仕上には蜜蝋(ブライワックス)を3回擦り込んで磨き上げました。後はこの重量物を確実に納品して組み立てるだけです。

【天板トラック】

さて、重い天板を運ぶ課題については専用の運搬具を制作して対処することにしました。名づけて「天板トラック」です。以下は、そのご紹介になります。
スノーボード用の中古車輪パーツを入手し
ツーバイフォー材で作ります。
ボーダーは体重移動で自在にカーブし、必要に応じて前後いずれかの車輪を浮かせてターンしています。それをこの「天板トラック」でも使えるように作ります。
まずはアルミダイキャストの車軸パーツをしっかり固定することが必須です。
ねじ込み式の埋め込みナットを使用しました。
天板を載せる部分はボードと同じです、人の代わりに天板を乗せ、周りで人が介助するわけです。
前後を斜めに削って、この部分を足で踏んで車輪を浮かし、方向転換できるようにします、これはスノーボーダーの動作を繰り返し見て考えました。
天板をよっかける縦材を組付けます。上部構造はトラス形状にして軽くて硬性の高い作りを目指します。ここがたわむようでは思った方向に移動させることはできません。
ハンドルのデザインです。車に乗せる際コンパクトになるようハンドルは取外しできるようにしました。実作したのは、このスケッチをさらに改良したデザインです、ハンドルそのものが楔になって、強固に固定でき、しかも簡単に取り外せる仕組みになりました。
ほぼ形になりました、後は車輪を付けるだけです。末永く使えるよう期待を込めて、オイルでしっかり仕上げました。
最後に屋号をステンシルします。
コピー用紙にラッカーを吹いて補強し、カッターで屋号を切り抜きました。
aの真ん中はノリで貼り付け、専用の筆で白の絵の具をステンシルします。
マスキングを剥がせば完成です。
このオリジナルの「天板トラック」、実はとても重宝しました。屋内では走行音もほとんどなく、樹脂車輪のため床材を傷つけることもありません。タワーマンションへの搬入の長い経路や、狭いエレベーター内での取り回し、スムーズな運搬、全てが予想をはるかに超えたものだったのです。