ロココ調というのでしょうか、座面に一切板を使っていない伝統的な作りの椅子を修理しました。こうした構造だと修理の手間は数倍かかるのですが、座り心地がとても良い椅子に仕上がります。座った時に座面に突き当り感が全くないのです。
ベルト、クッション、表張り生地、ほぼ全てを交換して修理しなくてはならない旨、ご依頼者に了承いただき、スプリングを含めて木枠以外のものを全て一旦取り外して、組み立て直すという修理の方針が確定しました。
修理を手がけてみて、長い歴史に育まれた欧州の椅子の魅力を実感できました。使用する素材は現代のものに置き換えるしかないのですが、その構造から生み出される座り心地は想像以上のものです。モダンな審美眼とは相いれないビジュアルかもしれませんが、こと体感でるき要素では、時間の淘汰こそ、佳いモノしか生き残れない最高のフルイなのだと思います。
まだまだ学ぶべきことは沢山ある。この椅子の修理を手がけさせていただいて、そんな幸せな気持ちになりました。