なんとか長い黒檀の入手のメドがたちました。弦楽器の指板用の黒檀があったのです、でもギター用では長さが足りず、チェロやウッドベース用の長いものを手配することができました。手元に届くのを待ちつつ、レストア作業の開始です。

まず徹底的にクリーニングです。表面の劣化した塗膜も慎重に薄く剥がしてしまいます。

濡れているときは木目がきれいに出ているのですが、乾くとこんな感じです。

天板の器の跡も不自然にならない程度に取り去りました

写真は残っていないのですが、引き出しが出っ張っていたのは木材の収縮が原因です。引き出し本体は木目を縦にして作り、外箱は木目を横にして作ります。この縦と横の収縮の差が本体の奥行き不足となって、引き出しが先に奥に突き当ってしまい、結果的に引き出しが出っ張ってしまうのです。今回この差が1センチ近くもあり、引き出し本体の奥行きを浅く作り直すことで対処しました。

欠ている縁の装飾を外します。膠を電気アイロンで溶かして外します。

欠けたところは一旦矩形に削り取り、ぴったりはまる木片を削りだして接着します

ここは黒檀の縁飾りを一本丸ごと交換です。

問題の長い引出も、弦楽器用の指板材から切り出した部材にまるまる交換です。

引出の表面板の着色です。木目がきれいに浮き出てきました。

正面の桟も色合わせします。内側は塗装されていないので樹種が分かります。

特に一番下の引き出しの中から見えるオリジナルの底板は色が紫がかっていて、引き出しの滑りを調整した際に薄く削った時の感触からも堅木でありことが分かります。まず間違いなくこれは紫檀だと思われます。そうなると外箱に使われている樹種も同じものだと考えるのが妥当です。引き出しの縁回しはアフリカ産の黒檀、本体には紫檀、とても贅沢な材料がふんだんに使われていたことになります。今ではこんな材料はまず手に入りません。