今回は住宅の建設会社様からのご依頼です。「リフォーム完了後養生シートを外したら、現場内で保管していた本棚とライティングデスクの天板が傷んでいた」とのことです。「リフォームで内装がきれいになったので、家具の方の傷がとても目立っている、家具を直すことでお客様の信頼を回復できないか」とのご依頼でした。

作業前の写真

まずしっかり養生し、作業中に手を加えない場所を保護します。そしてそれぞれの傷をよく観察して修理の方針を見定めます

ライティングデスクにはすり傷ができてしまっています

詳しく見ると傷は結構深く、たぶん養生する際に家具とシートの間に砂などの硬い粒子が挟まれてしまったのだと思われます。こうなってしまうとその後の作業者はシートの上からモノを載せたり場合によっては引きずったりするので内部でこんな傷がついてしまっても不思議はありません。深い傷なので全部塗装を剥がして下地からやり直す必要がありそうです。

本棚の方は家具の塗装が変色してしまっています。たぶん養生シートの隙間から内装作業で使用している溶剤類が浸み込んでしまい、養生シートの内部で変色してしまったものと推測されます。

とても目立つのですが、ダメージを受けている場所には、不思議なことに凹みはなく、仕上げの塗料のこの場所だけが脱色されてしまったようになっています。まず仕上げの塗装を全部研磨して一つ下の層を露出させ、改めて仕上げの塗装をすればこのシミはなくせると判断しました。

デスクの方はしっかり研磨します。素材がごく薄い突板なので削りすぎて下地が出てしまわないようないように細心の注意をしながら作業を進めます

本棚の天板は比較的細かな番手で表面全体を研磨します。艶のない状態ではシミの痕跡がわからないところまできました

最終仕上げで他の面と艶を合わせます。この後養生を外して天板以外の細かな傷を補修して完成です。

本棚も最終仕上げで、艶合わせします。この後扉を取り付け棚板をセットして作業完了です。

今回の作業は塗装の技量と経験が試される難しいものでした、木の家具は半透明な塗装が幾層にも積み重なって最終的な外観となっているので、各階層の不具合は常に後から見えてしまいます。一旦上の層がのるともうその下の層にはどうやっても手を加えられないので、下地から仕上げまで一切手を抜けないのです。この点が不透明な塗りつぶしの塗装とは全く異なりますし、難しいのです。今回ただひたすら自分の当初の所見を信じ、コツコツ作業を積み重ねることで、なんとかご依頼にこたえることができました。
木の家具の塗装はこのように難しくはありますが、完成した時の木目や艶の美しさはちょっと他のものでは味わえないと思っています。