今回のご依頼は少し変わったものでした。「机の脚と脚の間を1200mmに広げてほしい」というものです。なぜこの寸法でなければならないのか、机を引き取りに伺うまで謎でした。
伺ってみると、ご依頼者様は都心のワンルームマンションにお住まいで、狭いスペースをいろいろ工夫して広く使っていらっしゃいます。ご要望をうかがうと、くだんの1200mmはセミダブルサイズのベットの幅なのでした。改造した机に、このベットを差し込んで使いたいということだそうです。なるほどそうすることで、そのままこのベットが椅子になるのでスペース効率がよいわけなのです。さらに詳しく改造に至った経緯をかがうと、こうした計画を立て購入した机が、「いざ組み立ててみると横幅は1200mmあるものの、脚が邪魔してベットが差し込めないのだとわかった」それでこんな改造をしてくれるところを探してjcraftにたどり着いたとのお話でした。改造の意図と机の構造が呑み込めたので、その場で「邪魔してる脚を外側に広げ、1200mmの内寸を確保する」という方針が決まりました。

組み立て方の説明書です。ご依頼者様ご自身で組み立てられ、思っていた使い方ができないのことがわかり、今回の改造のご依頼となりました。

まず移設する脚を取り外します

次に脚を外側に取り付け直すために必要な個所にねじ込み式のナットを新設します

必要なネジの種類や長さ、改造するパーツの仕上がり寸法などを現物合わせで採寸し、メモします。その上で資材の調達に出かけます。

オリジナルでは天板の重さを支えていた足が天板の外に移動してしまうので構造的に不利になります、一旦切断して延長した横桟の補強も兼ね、表から見えないところに横桟を追加しました

組み立てです。左右に飛び出た脚のトップに100mm角程度の化粧の笠木をつけました。この後笠木も色合わせして完成です

今回は組み立て式の家具の改造でした、この種の家具は木目調シート貼り仕上で下地や構造材に合成木材MFDなどが使われています。木の粉を固めて作られたMFDは局所的な力には耐えられません。メーカーはそこら辺を熟知していて、力のかかる場所にはそれ相応の部材を配したり、組み立てには家具用の特殊な埋め込みナットやボルトを使っています。今回の改造に当たっては見た目より構造を優先し、新たに挿入した部材は広い面積で接合するように配慮したり、見えないところでいろいろ工夫しています。明確な改造の方針があって、そのへんの割り切りがご依頼者様と共有できればこんな改造も可能になります。