今回は住宅の建設会社様からのご依頼です。「リフォーム完了後養生シートを外したら、現場内で保管していた本棚とライティングデスクの天板が傷んでいた」とのことです。「リフォームで内装がきれいになったので、家具の方の傷がとても目立っている、家具を直すことでお客様の信頼を回復できないか」とのご依頼でした。

詳しく見ると傷は結構深く、たぶん養生する際に家具とシートの間に砂などの硬い粒子が挟まれてしまったのだと思われます。こうなってしまうとその後の作業者はシートの上からモノを載せたり場合によっては引きずったりするので内部でこんな傷がついてしまっても不思議はありません。深い傷なので全部塗装を剥がして下地からやり直す必要がありそうです。

とても目立つのですが、ダメージを受けている場所には、不思議なことに凹みはなく、仕上げの塗料のこの場所だけが脱色されてしまったようになっています。まず仕上げの塗装を全部研磨して一つ下の層を露出させ、改めて仕上げの塗装をすればこのシミはなくせると判断しました。
今回の作業は塗装の技量と経験が試される難しいものでした、木の家具は半透明な塗装が幾層にも積み重なって最終的な外観となっているので、各階層の不具合は常に後から見えてしまいます。一旦上の層がのるともうその下の層にはどうやっても手を加えられないので、下地から仕上げまで一切手を抜けないのです。この点が不透明な塗りつぶしの塗装とは全く異なりますし、難しいのです。今回ただひたすら自分の当初の所見を信じ、コツコツ作業を積み重ねることで、なんとかご依頼にこたえることができました。
木の家具の塗装はこのように難しくはありますが、完成した時の木目や艶の美しさはちょっと他のものでは味わえないと思っています。