あるミュージシャンからのご依頼で、ピアノ演奏用のスツールを直しました。スタンウェイのピアノと一緒に入手されたものだそうで、どんな作りになっているのか興味津々です。

上品な光沢を放つ、唐草模様の織生地が座面に張られています。このオリジナルの生地は活かしてほしいとのご要望です。
脚が外れています。脚の付け根だけで持たせる造りなので、これでは座ってピアノを弾くことはできません。
座面は取り外せて、その下に箱状の収納スペースが大きくとられています。楽譜などを収めておくのでしょうか。
座面が大きく反りかえっています。
脚の付け根の詳細です。
箱状に組み上げられた収納スペースの四隅に脚が固定されることで必要な強度を持たせる作りです。内側から三角柱の部材で脚の付け根が補強材されています。
座面の裏側です。凝ったリボンの装飾がされています。
メーカーのタグです。やはり海外で作られたもののようです。
収納スペースの底面です。木のチップを樹脂で固めて作られたパーチクルボードが使われています。
最も傷みの激しい所は、三角柱の補強部材が割れていました。
底板を外しにかかります
底板は釘止めです。
くぎ抜きを使って抜いていきます。
底板が外れました。
脚の再固定作業の開始です。
脚の付け根は、ダボ接合のようです。
4本とも外れています。
再接着に備え、一旦大きく開いて接着面を整えます。
割れた補強材を外し
接合面を整え
復元接着します。
底板を塗装した合板に交換し、補強のため横架材を追加設置しました。
横架材に着色し、
しっかり接着します。
脚底には硬質フェルトを貼って仕上げました。
次に座面の復元にかかります。
反ってしまった座面の基底板のみ交換します。新規に用意した基底板にオリジナルの仕上げ生地を全て移植していきます。
仕上生地はステープル固定でした。全て引き抜きます。
装飾テープも全て外します。
新たに準備した基底板です。必要な寸法に切り出し、
取っ手紐の収まるスペースをオリジナルに倣って造形します。
着色し、
とり外しておいた仕上生地を移植します。
擦れて薄くなってしまい、今にも切れそうな記事の角は、裏側に当て布をして補強します。
こうしておけば張り上げにテンションがかかっても裂けてくることはありません。
装飾のリボンも移植し
タグも付けて
座面も復元しました。この光線の具合では生地のシミが目立ってしまいます。この後、角の目安に貼ってあるテープを剥がし、本体に座面を載せれば完成です。