Yチェアのペーパーコードの張り替えのご依頼がありました。前回張り替えてから10年ほどたっているとのことで、数か所ペーパーコードが切れていました。

ご依頼の椅子は、ハンス J. ウェグナーがデザインしたカール・ハンセン&サンのCH24です。背もたれの支柱がY字型をしているのでYチェアの愛称で呼ばれています。

座った時にペーパーコードにかかる力が、フレームのつなぎ目を引き締める方向で働くようにデザインされているからでしょうか、フレームはしっかりしていて、椅子を手にすると意外に軽く感じ、強く引き締まってた印象を受けます。

それでは、作業開始です。

マルセイユ石鹸を泡立てて準備します
傷んだペーパーコードを全て外し、フレームのメンテナンスをします。今回フレームはソープフィニッシュで仕上ます。
まず、ちぎれたペーパーコードを外します。
ペーパーコードを切り、
念のため、張り始めの「捨て巻き」を確認し
巻き終わりの位置をマークして「捨て巻き」が何回巻かれていているか数えておきます。
次にフレームをクリーニングします。まずブラシで埃を落とします。
コードの隙間から入ったほこりなどで、結構汚れています。
泡立てたマルセイユ石鹸をスポンジに付けて擦り、汚れを浮き上がらせ、拭き取ります。
ひじ掛けの下側の手垢の汚れなども、きれいに落とし、ソープフィニッシュして一晩乾燥させました。
室内に移し、オリジナルの作業台に固定します。
いよいよへ―パーコードを巻いていきます。
専用の台をつくったので、ペーパーコードを強く張ることが出来ます。引き絞りながら椅子の周りを回り続ける作業です。
6mくらいに小分けしたペーパーコードで最初はここまで張れました。角の所にYチェアらしい形が現れてきました。
どんどん張り進めます。
だんだん真ん中の四角い隙間が小さくなってきます。
横長なので中央部分は8の字張りになります。
張り終わりました。専用作業台のおかげでしっかりしたテンションで張り上げることが出来ました
完成写真です、このYチェアは20年近く使い続けられ、ペーパーコード張り直しは今回が2回めとのことです。
フレームはだいぶ色焼けしています。とはいえ、10年以上前に開催されていた「ハンス・ウェグナー展」で見た、ほとんど黒に近いくらいに、濃い焦げ茶色になったフレームと比べると、まだかなり若い感じです。まだまだ現役ということですね。
ひじ掛けと背もたれが一体となっています。これもこの椅子の特徴の一つです。
ひじ掛けの支柱のS字カーブがとても美しいです。

今回の張り直しでは、デンマークの店頭でペーパーコードを張り上げている映像をネットで見つけ、参考にしました。専用の作業台はその映像で見たものを参考に、自作で準備したものです。この作業台は想像以上に有益で、強いテンションを維持して張り上げることが出来ました。

この作業台への椅子の固定は、椅子の椅子の横桟に、巧妙な形に削り出した横架材を渡して、その中央部分で下に引き絞って、締結しているのですが、本家のものはターンバックル引き絞っていたところを、自作では手元にあったゴムロープで代用しました。ところが、ペーパーコードを体重をかけて引っ張るので、椅子が動いてしまいます。動くたびに途中何度も引き締め直した結果、最後にはゴムロープが伸びきって、元に戻らなくなってしまいました。次回は本家に倣い、ターンバックルを使うつもりです。