ご自身で手直しされた天板が傷んできたので塗り直して欲しいとのご依頼がありました。

作業所に持ち込んで、子細に観察します。運んだ時の重さからして間違いなくこの天板は花梨などの広葉樹、南洋材だと推測しました。
塗装がところどころ剥がれ
直す前の天板の色が見て取れます。
塗り直しには、オード色系の着色剤入りニスを使われたようです。残念ながらオリジナルの塗装面への食いつきが不十分だったようで、塗膜の固着力が弱い状態で長年使われた結果、塗膜が剥がれ落ちる状態になったものと推測しました。

やはり今ある塗装を全て落とし、下地からしっかりとした塗装を積み上げ直す作業方針としました。

まず、塗装を削り落としていきます。
出てきた木の色、木肌、からブラックウォルナットの集成材でほぼ間違いないことがわかります。
フィンガージョイントで作られた長材を接着してできた板です。素材の持つ幅のある色味が、フィンガージョイントの作る独特の柄になって現れる美しい材です。
塗装の剥離が終わりました。この後目止めと着色をして養生しておきます。
一方、脚の作業に入ります。まず、傷んだ塗装を剥がします。
脚も素材はブラックウォルナット、どっしりとした重量感のあるモノです。二本のボルトでしっかり締結されるつくりです。
脚の上部の大きな面取りが、天板の小口の曲面に呼応する美しい形に作られています。
目止めと着色の終わったところです。
中塗りにサンデイングシーラー塗布と研磨を三回ほど繰り返します。
仕上塗装をして水研ぎ研磨をしているところです。

今回の紹介はここまでです。なぜか以降の写真を撮り忘れてしまいました。

以降、作業者の所感になります。

この天板の素材となっているブラックウォルナットの集成材は、実は私自身も数十年前に渋谷のハンズで目にして手に入れ、自分で脚をつけて塗装で仕上げ、ダイニングテーブルにして今でも使っています。当時はまだ日曜大工レベルの技術と経験しかなく、ちょっとお見せできるしろものではないのですが、この板に出会ったときの感動は今でも覚えています。決して安い買い物ではなかったのですが、とにかく手に入れないと後で後悔すると感じたのです。以降、今だにあの感動に見合う仕上方がわかりません。

ブラックウォルナットの集成材は、その素材に、紫から明るい褐色に至る、非常に広い色味と濃淡の幅があります。その色味がフィンガージョイントによってランダムなアラベスクのように現れ、てとも美しいのです。

家具に仕上げる場合、表面を傷や汚れから守るために、塗装などで仕上げることは避けられないのですが、仮に、塗装仕上げをオイル仕上げに変えたところで、全体を赤褐色系の色味に変化させてしまうことには変わりがなく、その結果、素材の持っていた色味の幅を、狭い範囲に閉じこめてしまうのです。

これを回避するとしたら、定期的に研磨する前提で、何の仕上げもしない使い方が唯一の方法なのかもしれません。ですが、もしかしたらソープフィニッシュが有効かもしれません。でも、ソープフィニッシュにしたところで、定期的な手入れが必要になるわけで、商品としての家具になることは難しそうです。いつか自宅のダイニングテーブルを実験台にしてみます。