重厚なデスクの修理をしました。その佇まいから松本民芸家具の製品ではないかと思っていたのですが、デスクの裏側に、剥がれかけたタグの断片を見つけた時「やはり」と思いました。松本民芸家具には信州の厳しい風土が育むものなのでしょうか、実直で質実剛健な気品があるので一目でそれとわかります。
接着後プレスして数日養生したにもかかわらず、接着面が再び剥がれだしたのです。30mm無垢の天板の乾燥による反りの力恐るべしです。これは何とかして阻止しないと折角仕上げた小口のヒビも元に戻ってしまいます。いろいろ検討した結果、上からは見えづらい所に接合補強の部材を追加することにしました。この部材で接着面を倍に増やすと同時に木ビスを打って2度と剥がれることのない様にできるはずです。
松本民芸家具の修理を手がける機会がこのところ続いているのは、実はみな同じお客様のご依頼です。欧米では良い家具は世代を超えて引き継がれるのが普通だそうですが、日本でも同様によいモノが引き継がれていく時代になりつつあるようです。写真では伝わらないでしょうが、よいモノはやっぱり良いです。艶の具合、色味、形状、どれをとってもそうあってほしいと思う通りなのです。
そう感じて、調べてみるとやはり歴史がありました。民芸運動、吉田璋也・・・。検索で画像が見られる時代に生まれたこと幸せに思います。お客様のお父様は画家、ご自身はミュージシャンです。日本で生まれた文化が世界でも認められる、こんな嬉しいことはありません。