30年以上使われてきた婚礼家具「三面鏡」の修理のご依頼を受けました。

リストア完了後
リストア完了後の姿見。側面板の形を改良し、収納スペースの扉をケンドン式に改造しました。

部屋の出入り口に置かれている姿見は、開いていた扉に鞄が当たってしまい、ひどく損傷していました。ですが、結婚当時ご両親から贈られたこの姿見には、格別な思いがあり、ご自身で修理をしながら使い込まれてきたものでした。

工房に運び込んだ状態です。ガムテープや樹脂製のヒンジを貼りつけて
なんとか使われてきました。
鏡の方はさほど大きなダメージがありません
ですが、ここかしこにテープで補修した跡が残っています
ガムテープは劣化すると接着成分だけが残るこんな状態になります
蝶番は長年の開閉で軸のロッドが10mmもずれてしまっています
まず軸のロッドを正規の位置に戻してあげます
ガムテープの残滓を取り除き、鏡も含め全体をクリーニングして、鏡の部分は補修完了です
いよいよベース部分の補修開始です。向かって右側の作面板が割れて外れています。
部屋の出入の際に開いた扉の先がひっかりり、テコの作用でこんな大きな損傷になったようです
引出は内外からガムテープで補修してあります。破損した接合部の木片が挟まり、正規の位置に止められないため隙間が空いたままの補修です
まず表板を一旦外し、接合面を整え、クリーニングします
二つの引き出しを分解清掃したところです、当然引手の金具も一旦外しています
ついで右側面と収納扉を外しました
外れた側面板の丁番を外します。木工クランプを組み合わせてしっかり固定し、ビスを外します
横にして立て、外れた側面板を仮合わせしてみます。
側板の一部が扉と一緒に開閉する作りだったのです。
脚の補修に入ります。積層整形された合板の接着が弱まり、剥がれてしまい、上からの荷重を支えられなくなくなっています
オリジナルの薄板を全て取り除きます
2.3mmのラワン合板を接着します。ここでは借り釘を使っています。釘が細くて打ち込むのが難しくなれるまで数年かかりました。愛用の金槌が欠かせません
側面板の一部を切り欠いて改良します。この形なら出入りの際に引っかかるリスクが軽減されます
次に接着面の整形です
扉についていた部分に同じ厚さの合板を接着して再生します
接着の様子です。スポーツ医療のテーピングの要領で仮止めします。
硬化してから全体の形を整えます。
反対側の側面板も同じ形に切り欠きました。使った工具はジグソーです
右側面板の成型が終わったところです。角の丸みを整えるとすっかり元の形状が蘇ります。
側面板の接着です。大型のクランプでしっかり圧着します
切り欠きの部分を丁寧に整形します。オリジナルにはなかった形状ですが、オリジナルの小口処理に倣う形に成型することで違和感なく仕上げていきます
左側も同じように整えます
引出の修理です、箱と表面板をクランプでしっかり圧着します
ベルトクランプを使って開口側もしっかり圧着します
引出と扉の表面版を塗装で仕上げていきます。蝶番で右開きだった扉は、ケンドン式に改造しました。これなら出入りの時に開いた扉にひっかける心配はなくなります。
塗装で色合わせ、艶合わせをして、下部の作業がほぼ終了しました。
引出、ケンドン扉を閉じるとこんな感じの仕上がりです。ケンドン扉には雰囲気の合う取っ手を取り付けました
引出の取っ手の取り付けです。オリジナルの取っ手の固定ナットが欠損していたのですが、適合する規格のナットがもう製造されていなかったのでエポキシでの接着剤固定です
貫通した裏側からもネジの頭にエポキシを充填して、溝を切った木片に一体になるしっかりした作りに改造しました

三面鏡の修理は今回で4回目ですが、鏡には特別な意味があるように感じられてなりません。綺麗に直した姿見をご覧になった瞬間のご依頼者様の笑顔に、格別なものがあるのです。

それがいつもとても嬉しいので、私はついこんな風に言ってしまいます。「三面鏡の修理は得意なんです」