椅子の背もたれがぐらつくの直してほしいとのご依頼を受けました。

実は事例の(46)と同じご依頼者からの同時発注で、このタモで作られた椅子の修理には、デスクをリメイクした残りの部材を使って補修する事を前提でお受けしました。

修理前の椅子4脚です。
背もたれは座面の板材に差し込まれた作りになっていますが、この接合部が緩んで、背もたれに寄りかかると、前後に角度が変わりグラグラするようになっていました。
このような作りなら、背板は座板を貫通して下に突出させ、楔を打ちこんで引き締めない限り、強度的には不十分と思われます。ですが、実際には貫通はしておらず、これでは梃の原理で増幅してくる横への力を受け止めることはできません。
リブ状の補強部材を追加することで修理方針のご了解をいただきました

まず背もたれと座面の角度を折った紙で移しとり、これをもとに型板を作りことから修理開始です。

薄べニアを使って型板を作ります。
実際に取り付ける場所にあててみて、隙間なく密着するか確認します。
その結果、4脚とも共通して右と左では奥行きが違うことが判明しました。たぶん製造機械の調整が微妙に狂っていたのだと思われます。実用上問題はない僅差なので、左右別々の型板を作り、その形で補強板を作り、取り付けることにしました。
完成した左右の型板です。奥行きの差は1ミリ程度の僅差です。
デスクの端材から補強板を切り出します。まず正確に形を書き写し
切り出します。
4脚それぞれの個体差も少しあるので、個別に微調整してピッタリとフィットするようにします。
計画していた位置に補強リブを固定します、背板の表面に加工の痕跡を残さないよう、スケッチとは異なる固定方法に変更しています。上下いずれも木ネジの埋め込み方式に改めました。
木ビスの頭はこのように木栓で埋め込み、同色に仕上げます。
補強リブの取り付けと色合わせが完了しました。
同じ素材のリブなので、全く違和感のない仕上がりです。
背もたれに寄りかかっても、びくともしなくなりました。
元々回転する座面を持つ、使い勝手も良い椅子です。
背もたれがしっかりすることで、使い心地も一段と良くなりました。背もたれの中ほど、両端にある、ダイニングテーブルの小口に当たり続けてできた凹みは、角がささくれてセーターなどが生地が引っかかるとのことですが、この個所もご要望通りなだらかな局面に整形して、手触りの良い仕上にしてあります。