事例紹介(15)の「プラスチック製のドレッサー」をご依頼いただいたお客様から久しぶりにご連絡を頂戴しました。木製の古い本棚のグラツキを直し、食器棚のガラス扉の開閉を調整してほしいとのご依頼です。

早速お宅にうかがい、詳しく現状を確認しました。本棚はクサビを打ち込んで棚板を固定する伝統的な構造のもので、クサビの代用品として竹箸が差し込まれていますが、本来のクサビの効果は全くなく、接合部の引き締めにはなっていません。ガラス扉の方は扉の桟が外れている箇所を再接着し、開閉時に接触している箇所を削り落とせば直ります。

本棚用に、本来あるべき形とサイズのクサビを工房で作っておき、ご都合の良い日時に再訪問して出張で作業させていただくことになりました。

出張作業当日の様子です。本棚とガラス扉両方で正味1時間程度の作業でした。

本棚は本を入れたまま作業します。昔ながらの伝統的な作りの本棚ですが、クサビをきちんと所定の位置に打ち込めば、思わぬ大容量にも耐える、使い勝手のいい本棚です。古いものがお好きな方にはたまらない、素朴な質感が魅力です。

本棚のクサビの現状です、竹の箸を突っ込んで、頭を切り落としただけです。
作ってきたサイズの合ったクサビに交換して打ち込み、棚板と側面板の接合を引き締めます。この部分がしっかりすることで、本棚自体も引き締まり、グラグラが収まりました。
作業が完了した本棚の全体です。全部で12本のクサビを全て交換しました。

続いてガラス扉の調整です、割れ物だけ出していただき、金属や樹脂などの器類は入れたままで作業します。

左の扉の上端のホゾの緩んだところを再接着し、テーピングして養生しておきます。1日経ったらテープを剥がしていただけるようお願いしてここの部分は修理完了です。
右の扉は、この食器棚を入手した当初から開閉が渋くて、ほとんど閉めたまま使われてきたそうです。冬場の関東地方は乾燥しているので、また梅雨時になったら再調整が必要になるかもしれませんが、今の環境下でベストな調整をしました。
お客様が動画を撮って提供してくださいました、感謝です。特殊な木製クランプで扉を固定して扉の下面を削り落としています。荒い番手60番から細かい番手120番に、30分ほどかけてひたすら研磨を進め、少し抵抗がありつつもすんなりと閉まるように調整しました。