鏡の修理を依頼されました。

壁掛けの紐が外れ床に落ちた際に、外枠の角が破損してバラバラになってしまったとの事。鏡自体が結構重いので、床に落ちた際の衝撃は大きく、接合部が破損してしまうと、こんなことになってしまいます。

鏡が外れています。むしろこんな状態になったのに、鏡が割れず怪我することもなかったこと、幸運としないといけないかもしれません。破損した外枠の角のつくりが「思いのほか華奢で、驚いた」との事、長年愛用されてきただけに、落胆されたことでしょう。
ワンポイントの装飾が効いています。無垢材の楢でなければできないこうした加工により、無垢材を使っていることをアピールしています。
枠がバラバラになっています。底辺が曲線なので安定して床に置き、壁に立てかけられるようなオリジナルの台座も一緒に制作する提案をし、了承されました。
作業内容をスケッチにまとめ、事前了解をいただき、作業開始です。
まずホゾの破片などを頼りに、オリジナルの組みたてを踏襲するための合い番を振っておきます。
接合面の形を整え、額縁状に一旦接着します。
テープ状のクランプを使いました。テープの長さを改造して延長してあります。
接着剤がはみ出ると、仕上げの時に手間がかかります。余分なところに接着剤がはみ出ないように必要に応じてテープで養生します。
当初裏板は交換が必要と思っていましたが、意外にしっかりしていたので、ビス穴を補修して、再利用することに変更しました。
角をビスケットジョイナーを使って溝切します。
ぴったりはまる厚みに仕上げた堅木を埋め込んで接合部を補強します。
最近よく使うビスケットジョイナーです、しっかり位置合わせができるガイドが付いていて便利です。
ビスケットの形をなぞり、ジョイナーでさらった溝に、ぴったりはまる部材を削り削り出します。
クランプでしっかり圧着した状態で養生します。
山桜の堅木で、台座を作りました。
横から見るとこんな感じです。R状の溝に鏡の額縁がぴったりと収まります。
角の接合部の接着剤がしっかり固まったら、余分な部分を削り落とし、色合わせに向けた下地調整をしておきます。
台座の色だしです、ワトコオイルのチェリーを使いました。
刷毛でオイルを多めに塗り、しっかりしみ込ませた後で、布で余分なオイルを拭き取って仕上げています。
ついで、背板の小口調整をします。
鏡をクリーニングし、
外枠全体の色合わせします。この後鏡と背板を組み立てて完成です。
オリジナルの台座に収まった鏡です
全身の映る角度に傾け、背後の壁に立てかけます。
台座に滑り止めを施してあるので、滑って倒れる心配はありません。
横から見た感じです。スケッチの時のデザインより、奥行きのある安定した形状に変更しました。