長年使ってきた、バタフライテーブルの天板を塗り直してほしいというご依頼がありました。ご訪問しテーブルを拝見すると、鍋や食器の跡が白く残っている所が数か所あります、これを取り去って天板だけを塗り直してほしいとのことです。天板の広い面は楢の突板で、外周は無垢の楢製、角のR状の面取りが印象的なテーブルです。

実物を拝見しながらご依頼者様と事前打ち合わせしました。
縁周りとの段差に、こすれて塗装の剥げたところがあります。これはタッチアップして補修した後、全塗装して目立たなくします。ご依頼者様にこの処置の方針をお伝えし、ご了解いただきました。
白化した食器類の跡です。これは熱による塗装面の変色なのですが、この変色がどのくらい深いところまで及んでいるか、作業をはじめてみないとわからないこと。その度合いによっては、完全には消し去れないかもしれないこと。ご依頼者様にご説明しご了解いただきました。

工房に持ち帰り、早速作業開始です。

今回の作業の対象外ですが、まず脚のクリーニングをします。
ウレタンスポンジに1/40に希釈した中性洗剤をつけて、軽く擦って汚れを浮かせ、拭き取ります。
クリーニング完了です。今回は塗装の足つけをするためではないので、ごくあっさり汚れを落としただけですが、見違えるように綺麗になります。
天板の作業開始です。まずはクリーニングです。足回りとは違い今度はしっかり擦って、塗装の足つけも兼ねたクリーニングです。特に、消し去ることを目標にしている「食器跡」は、濡れ色になった時、どんな色味に変化するか、よく観察しながら行います。
白化した食器跡は、ウレタンスポンジの研磨ではとりきれていません。
希釈した中性洗剤をスプレーして600番の耐水ペーパーで、色の変化を見ながら慎重に研磨します。
水を付けて濡れ色になった時、半渇きの時、光を反射させてみた時、同じ痕跡がなくなったように見えたり、かえって目立って見えたりします。さらに、この後の塗装でも大きく変わります。これまでの経験を総動員して、このくらいがベストと判断して研磨を終えた状態です。残念ですがこの写真では、そのへんが全く伝わらないですね。
サンデイングシーラーをドライ研磨をしつつ
2度塗りした後の写真です。ほぼ食器跡はとりきれました。
光の加減で白い痕跡がうっすらと見えるところもありますが、よく探さなければ気がつかないレベルです。この段階で、外周のR状の装飾部分にあった、塗装の傷みやはがれを、色合わせ・タッチアップで処置しました。
仕上げのトップコートをしました。艶が上がることで痕跡はほぼ見えなくなりました。
2度目の仕上塗装をした後です。外周の面取り装飾もしっとり落ち着いた仕上がりになりました。
食器跡は全くなくなりました。
折りたたんだ時にしか見えない小口にも仕上げのトップコートを吹き付けて完成です。