椅子の座面の張り替えのご依頼がありました。背もたれが籐編みの椅子です。

オリジナルはパイピング装飾のされたチェック柄の生地が貼ってありました。この生地を新しく購入されたソファーと同じ色にしてほしいとのご依頼です

新しい生地は、サンプルを用意して訪問し、ソファーの合成皮革と色合わせしてお決めいただきました。採用いただいた合成皮革は汚れが付きづらく、抗菌素材です。しかもかなりしなやかで三次曲面に張ることができます。今回の張り替えでは、オリジナルのパイピング装飾は踏襲せず、角の所は引き伸ばして形に沿わせる仕様と決まりました。

オリジナルの生地はかなり傷んでいます。角のパイピングの所は擦り切れています。
背もたれの籐編みも所々塗装が剥がれ、籐の編み込み自体欠落している箇所が散見されます。こうした細かな問題点はクリーニング作業の過程で明らかになってきます。当初の修理手順を考え直し、必要な材料を再手配します。
修理作業の開始です。まず座面を外します。
座面は4本の長ビスで固定されていました。
座面を外してみて、また新たな問題が現れました。
前の脚のホゾが緩んで隙間ができています。木は経年すると痩せるので、ホゾが緩くなることがよくあります。その結果座ってみるとグラグラする感じの椅子になってしまいます。緩んだホゾはしっかり固定しなおさないとなりません。
本来なら木部を全て分解して再組立てするのですが、今回この脚の付け根、左右2か所だけが緩んでいる状態なので、この部分に接着剤を押し込み再接合することにしました。こうした作業に活躍するのは油彩用のペンティングナイフです。
ペンティングナイフは薄くて隙間に入りやすく、はみ出た接着剤を集めて押し込むのに好都合です。
はみ出た接着剤を拭き取り、
ポニークランプで圧着します。
プレスすると余った接着剤がはみ出てくる理想的な再接着ができました。もちろんこの後すぐ余分な接着剤を拭き取って、24時間放置します。
次に籐編みの背もたれの修理です、籐編みに使われている籐の表皮を用意します
よく見ないと見落としてしまいますが、欠落している箇所があります
幅をオリジナルに合わせ、余分な厚みをそぎ落とし、少し濡らして柔軟性を持たせた籐皮を接着剤を付けて差し込みます。始まりと終わりを二編み分ほどオリジナルの編み込みに重なるように差し込み、接着します。
処置が終わったら表と裏からテープを貼ってしっかり圧着し、24時間養生しておきます。
欠損した個所が思いのほかありました。
接着剤が完全に固まったらテープを剥がして色合わせします。同時に塗装が剥がれていたところもタッチアップして背もたれの作業は一旦終了です。
次に座面の張り替えに入ります。
オリジナルのタッカーの刃を一本一本外します。この化粧テープの下に本止めのタッカーが打たれています。100本以上はあるので、根気よく作業します。
古い生地が外れました。
スポンジも外します。
背もたれの木部の角の塗装のはがれを色合わせしつつタッチアップします。
タッチアップが終わったら・・・・
籐編みの背もたれと一緒に、仕上げのクリヤーコーティングを吹き付けておきます
新しいクッションと合皮が到着しました。ここから一気に生地を張り替えたのですが、作業に没頭して、写真を撮り忘れてしまいました。
座面の裏張りを用意します。
今回茶色の不織布を裏張りに使用しました。
完成した座面を木枠に取り付けます
完成です。
完成写真01
完成写真02
完成写真03