素敵な本棚の修理依頼がありました。お気に入りの本棚だったのに、引っ越しの時に倒れてしまい、痛めてしまったとのことです。

棚板が割れています。
角が割れてしまっています。

下見にうかがい、実物を拝見して、今回は本体の修理を出張作業で、棚板の修理を工房で行うことにしました。出張作業と工房の作業を組み合わせることで、本体の輸送にかかる費用を削減できます。

客先での割れの修復作業です。接着剤を流し込み、クランプで仮止めして借り釘で圧着しました。
緩んでいたホゾの引き締めです。接着剤を入れ、ポニークランプで圧着しました。
一番荷重のかかるこの場所の引き締めは必須でした。棚板を直している間、客先でこのまま養生しておき完全接着します。

持ち帰った棚板を工房で修理します。棚板は横架材が割れてしまって荷重に耐えきれず曲がっています。

割れて反ったまま使われていた棚板は荷重から解放されても元の平面に戻りません。くの字型に2回丸鋸を入れ、横架材を切り離しました。
ホゾとの接合部を手鋸で切り落とし、横架材を取り除きます。
電ノコで切り出した堅木です。オリジナルの素材は針葉樹でしたが、よく乾燥した広葉樹に交換することで強度が確保されます。
接着剤を塗り、
クランプで表面版に圧着します。
接着完了、余った部材を切り落とし、
表に返して小口面を整え、面取りしました。
次に、ダボの受け部分の加工をします。オリジナルの横架材を参考に罫がき、
ドリルとノミで掘り込みます。
塗装して棚板を仕上げました。若干色が違いますが、下に向く面なのでほとんど見えず、気にならいはずです。
再び客先に出向き、修理完了。割れた個所をタッチアップし、直した棚板をはめ込みました。
シャビーな本棚が復元しました。
シャビーな手作り感が、タッチアップや修理跡を飲み込んでしまい、全く気にならない仕上がりです。

出先でできることは限られてしまいます。大型工具が無い事と、溶剤臭が出せないことがその理由です。

今回は割れの補修後、棚板の納品時にタッチアップだけしましたが、ごく微量の塗料なので溶剤臭はほとんど残りません。一方棚板は工房に持ち帰っての作業なので、横架材を交換して直し、棚板としての強度を確保した上で、しっかり塗装仕上ができます。従来通り本棚全体を引き取って作業するのに比べると、割れの修理跡の凹凸が多少残ってしまうことぐらいです。この点は期待した通りシャビーな手作り感に埋没して全く気にならない仕上がりです。一方で修理費は半額以下になりました。

修理作業はケースバイケースです、毎回このような分離作業ができるわけではありませんが、それができるかどうか、常に検討してみる価値はあるようです。