ダイニングテーブルと椅子の脚を切り詰めたいというご依頼がありました。脚のカットは運搬にかかる費用を削減するため、出張して家具のある場所で作業します。

今回ご依頼いただいたダイニングセットは海外から持ち帰られたしっかりした作りのモノでした。
まずカットする位置を罫書ます

切り詰める寸法は、ご要望に合わせていかようにもできますが、事前にお決めいただき、この罫書の道具を事前に準備して作業にうかがいます。というのは、足は垂直に床に接しているわけではなく、ほぼ例外なく斜めに床に接しています。この道具を準備しておくことで、必要な傾斜を付けたカットができるのです。

次に床に養生の毛布を敷き、その上でテーブルを上下逆さにします。

このように大きなダイニングテーブルの場合、逆さにするお手つだいをお願いする場合もあります。

まず脚先の処理をします。

床に接する部分に、高さを微調節する金属製のネジが埋め込まれている場合があります。その場合その金属部品を外すか、埋め込まれている先でカットするかいずれかになります。外観からは見えないのでこの段階で脚先のパーツを外してみて必要な対処をします。今回は埋め込まれた寸法がカット寸法より短いモノだったので、このまま切ることが出来ました。

切り口付近は鋸の刃が当たり、いくらか塗装面が削られてしまいます。傷める塗装を最小限にするためテープを巻いて養生します。テープの縁は罫書線よりはっきり目立つので以降の作業の精度を上げるためにも役に立ちます。

罫書に合わせて切り残す側にテープを巻いて表面仕上げの塗膜を養生します。

斜めにカットするので、テープはその伸縮を活かして斜めに歪めながら、慎重に罫書に合わせます。

次いでカット面の傾きに合わせて特殊なクランプを固定します。

クランプを取り付ける角度は、縦横斜めから何度も確かめて、テープの端とクランプの側面が同一平面になるようにして、しっかり固定します。

このクランプに沿わせて手鋸を前後に動かしカットします。

ちなみにこの写真はテーブルの後でカットした椅子の脚を切り詰めた時のモノです。テーブルも椅子も同じ工程で行います。

このような手順でカットすることで、床と同一の平面でカットすることができます。以上が、カット後ガタつくことのない脚の切り詰め方の肝です。
鋸は手持ちの一番切れ味のいい和鋸(引き切り鋸)を使います。
沿わせたクランプの上で暴れないよう、あまり強く力を入れず、基本通り引く時にだけ切る意識で、押し3引き7の力配分をイメージして鋸を動かします。このように鋸を正しく扱えれば、カット面したはほとんどサンディングしなくても十分な平面を出すことが出来ます。
カット面の外周を面取りし、
脚先には硬質フェルトを貼って仕上げます。

フェルトの張り方にもコツがあるのですが、その紹介はまたの機会に譲ります。

今回、テーブルと椅子3脚の脚のカットに要した時間は正味2時間ほどです。前後の準備作業などを合わせると3時間ほどでしょうか、いずれにしても客先での作業なので、持ち込む道具など事前の準備が大切です。また、どんな手順で切り詰めるのか知っておいていただけると、お客様との円滑なコミュニケーションにつながるので、今回は作業手順を詳しくご紹介しました。