カリモクの伸縮テーブルの塗り直しのご依頼がありました。
伸ばした状態ではこの写真の大きさまで広がります。

もう数10年愛用されてきたダイニングテーブルです。日本の住宅事情にあった小ぶりなサイズながら、天板の半分ほどが二重になったデザインで、この部分が左右にスライドして広げられ、ほぼ倍の大きさになるとても便利なテーブルです。このデザインのテーブルはもう生産されていないようで、これからも使い続けたいので色を塗り直して、脚も30mm切り詰めて仕上げてほしいとのご依頼でした。

作業所にお引き取りし、代用に使われてきた木片を参考に、まず欠損している特殊な形のダボを作ります。
また、天板の突板が一部剥がれてしまっています。これは塗装工程の最初に対処していきます。
逆さにして脚を外します。
シンプルな木構造のみで伸縮する仕組みを成立させています。
拡張時に引き抜いてしまわないよう、ストッパーの役目をするダボです。
このダボを外し。
拡張する天板を引き抜き、桟を一旦外し、外した桟に薄板を貼りつけます。拡張時にできる「天板の段差をなくしたい」とのご要望にお応えするため、天板と桟の間に薄板を挟み込むことにしたのです。
桟の側面には、先ほど整形しておいた特殊なダボをセットします。
貼り付けた薄板の厚みを2mmに整形し、
周囲を面一に仕上げ、
桟を天板の裏側にネジ止めします。
次に天板の突板の欠損を埋めます。欠損した箇所と似た木目の突板を選び、
欠損した形をトレーシングペーパーで写し取ります。
トレーシングペーパーを突板に貼り、埋め込むピースを切り出します。
切り出したピースを嵌めてみます。
良さそうなので接着し、借り釘で圧着して養生しておきます。
一晩経ったら、周囲を傷つけないようテープでマスキングして、
鉋とサンディングペーパーで余分な厚みを削り落とし、
天板と面一に仕上げます。そして塗装工程に入っていきます。

今回ご紹介の事例では、塗装工程の写真が残っていません。ですので突然完成に至るのですが仕上げの色味と艶加減には、毎回神経を使います。

天板と脚をご指定の色に塗り上げました。今回は黒に近い濃茶がご指定色です。
脚も切り詰めた先端の丸みが違和感なくなるように塗装で仕上げます。
半艶に吹き付け、塗装の完了です。

目標にした仕上がりの色味は、話し合いによるイメージの共有でしかなかったのですが、納品時に「イメージしていた通りの色です」とのお言葉をいただけて、安堵しました。ここらへんのコミュニケーションには細心の注意を払ってきましたが、残念ながらコミュニケーション不足になってしまったこともあります。

毎回下地となる木地の色味が違うので、そのものずばりの塗装見本を作ることは無理ですが、なにか基準になるような色見本の必要性を感じています。今後はDICなどの印刷用色チップで代用し、せめて基準となる色を共有できないか、試してみようと考えています。